ChatGPT（チャットGPT）は質問に答えたり文章を作成したりと、幅広い用途で活用できる便利なAIチャットボットです。しかし、うまく使いこなすには「プロンプト」と呼ばれる入力文（指示や質問）の書き方が重要になります。初心者の中には「思ったような答えが得られない…」と感じる方もいるかもしれませんが、それはプロンプトの工夫次第で改善できる場合が多いです。実際、AIに望む回答を引き出すテクニックはプロンプトエンジニアリングとも呼ばれ、注目を集めています。
本記事では、プロンプトとは何か、なぜ重要なのかを解説し、基本的なプロンプトの書き方から具体的なテクニックまでを初心者向けに紹介します。明確な指示の出し方、文脈（コンテキスト）の提供方法、具体例の使い方、逐次プロンプト（チェーンプロンプティング）の活用、さらにはロールプレイや条件指定のテクニック、よくある間違いと改善例まで、盛りだくさんの内容です。記事の最後にはすぐ試せるサンプルプロンプトも掲載しています。プロンプトのコツを押さえて、ChatGPTからより良い回答を引き出せるようになりましょう。
プロンプトとは何か、なぜ重要なのか
まずプロンプト(prompt)とは何かを押さえておきましょう。プロンプトとは、ChatGPTなどのAIに投げかける質問や指示の文章のことです。ユーザーが入力欄に書き込む内容がプロンプトにあたります。例えば「今日の天気を教えて」と尋ねるその文自体がプロンプトです。ChatGPTは、このプロンプトの内容をもとに回答を生成します。
なぜプロンプトが重要なのでしょうか？それは、AIの出す回答の質がプロンプトの内容によって大きく左右されるからです。言い換えれば、「質問の質」が「回答の質」を決めると言っても過言ではありません。漠然とした尋ね方をすれば曖昧な答えになりやすく、的確な尋ね方をすればより的確な答えが得られます。ChatGPTは非常に高性能ですが、こちらの意図を正しく伝えられなければ本来の力を発揮できません。そのため、プロンプトの書き方を工夫することがとても大切なのです。
また、プロンプトはAIとのコミュニケーションの手段でもあります。人間同士の会話で相手に何かを頼むとき、言い方ひとつで相手の反応が変わることがありますよね。それと同じように、AIに対しても指示の出し方で結果が変わります。適切なプロンプトを書くスキルを身につければ、ChatGPTをはじめとする生成AIをより思い通りに活用できるようになるでしょう。
基本的なプロンプトの書き方
それでは、具体的にどのようにプロンプトを書けば良いのでしょうか。まずは基本的なプロンプトの書き方のポイントを押さえましょう。シンプルに言えば、「ChatGPTにしてほしいことを具体的に伝える」ことが基本原則です。以下の要点を意識してみてください。
- 何をしてほしいか明確に書く: 求めるタスク（要約してほしい、アイデアを出してほしい、翻訳してほしい 等）をはっきり述べます。例：「～してください」「～を教えてください」。
- 必要な情報や前提があれば含める: 質問の背景情報や前提条件がある場合は、プロンプト内で説明しておきます。例：「〇〇という状況で△△についてアドバイスしてください」。
- 望む回答の形式やトーンを伝える: 回答をどんな形で得たいか指定できます。例：「箇条書きで」「200文字程度で」「優しい口調で」。
基本的な書き方のコツは、ChatGPTが「何を」「どのように」答えれば良いかを迷わないようにしてあげることです。曖昧さを減らし、具体的で指示が明快なプロンプトを心がけましょう。次章から、こうしたポイントを踏まえた具体的なテクニックを順に紹介していきます。
明確な指示を出す方法
まずは明確な指示を出すテクニックです。プロンプトでは遠回しな表現よりも、ストレートに要望を伝える方が効果的です。ChatGPTは人間ではないので、婉曲な表現や含みを読み取るのは苦手です。ですから、シンプルで率直な言い方で伝えましょう。
- 具体的な動詞を使う: 「教えてください」「説明してください」「比較してください」のように、具体的なアクションを示す言葉で依頼します。「良い感じにして」などの曖昧な表現は避けましょう。
- 出力の細部を指定する: 必要に応じて回答の制約を加えます。例：「3つの箇条書きで答えてください」「150字以内で要約してください」「専門用語は使わずに説明してください」。
- 対象や視点を明らかにする: 誰に向けた回答か、どんな視点なのかを指定すると回答がぶれにくくなります。例：「初心者向けに優しく説明してください」「経営者の視点でコメントしてください」。
指示を明確にした例:
「経済について説明して」ではなく、「日本の少子高齢化が経済にもたらす影響を、主要なポイントを3つ挙げて説明してください」のように、何について、いくつ、どのように説明してほしいかを具体的に指示しましょう。
文脈を提供するテクニック
次に、文脈（コンテキスト）を提供するテクニックです。ChatGPTは会話の文脈をある程度記憶しますが、基本的には与えられた情報のみをもとに回答します。そのため、あなたが持っている前提知識や状況を共有しないと、AIはそれを考慮した答えを出せません。必要な文脈はプロンプト内でしっかり伝えましょう。
- 背景や状況を説明する: 質問に関連する背景情報があれば最初に説明します。例：「〇〇というプロジェクトで△△について悩んでいます。○○な状況です。その上で質問ですが…」
- 指示に関連する詳細を含める: 特定の人物や物事について質問するなら、その人や物事が何者かを簡潔に紹介してから尋ねます。例：「アインシュタインという物理学者について質問です。彼の生涯の中で最大の業績は何ですか？」
- 必要に応じて資料やテキストを提示する: 分析や要約をしてほしい場合は、その対象となる文章やデータをプロンプト内に含めます。例：「以下の文章を要約してください: 『…（要約してほしい文章）…』」
文脈を与えたプロンプトの例:
「私は5歳の子どもに科学を教えています。最近、植物がどのように成長するのか質問されました。光合成について、この子にもわかるように優しく説明してください。」
これにより、対象（5歳の子ども）や内容（光合成）が明確になり、適切な回答を得やすくなります。
具体例を挙げる重要性
プロンプト内で具体例を示すことは、ChatGPTから狙い通りの回答を引き出すために非常に効果的です。具体例を示すことで、回答の形式やスタイル、期待する内容を明確に伝えることができます。
- 望む形式の例を示す: たとえば、ブログ記事のタイトル案が欲しい場合に「例：『春のお出かけにおすすめのスポット10選』」と示すと、同様のスタイルで複数案が得られます。
- 質問のパターンを例示する: いくつか例示した後に「同じ形式で〜してください」と依頼すると、例に沿った回答が得られます（Few-shotプロンプティング）。
- 間違いや正解の例を示す: 「間違った例: ○○。正しい例: ○○。では、△△の場合はどうなりますか？」と提示することで、AIが期待されるパターンを理解しやすくなります。
例を示すことで、こちらの期待する回答のイメージを共有できます。ただし、例があまりに具体的すぎると、AIがその文言をそのまま返してしまうこともあるため、必要最低限のヒントに留めることが重要です。
逐次プロンプト（チェーンプロンプティング）を活用する
ChatGPTとの対話は一度きりではなく、逐次プロンプトによるやり取りを活用することで、より充実した情報を引き出すことができます。逐次プロンプト（チェーンプロンプティング）とは、一連の関連するプロンプトを段階的に投げかけて回答を深める手法です。
- 大きな課題はステップに分ける: 複雑な依頼は、一度に全部を聞くのではなく、段階ごとに尋ねます。まず概要を出してもらい、次に特定の部分について掘り下げると効果的です。
- 前の回答を踏まえて追加質問する: ChatGPTの回答を受けて、「では○○について詳しく教えて」といった追加質問を行うと、より詳細な情報が得られます。
- 訂正やリクエストを重ねる: 最初の回答が期待と異なっても、プロンプトを言い換えたり追加の指示を与えることで、回答の質を向上させることができます。
逐次プロンプトの活用例:
ユーザー: 「新商品のアイデアをいくつか出してもらえますか？」
ChatGPT: 「アイデア1: ○○。アイデア2: ○○。アイデア3: ○○。」
ユーザー: 「アイデア2が気に入りました。それを実現するためのステップを教えてください。」
ChatGPT: 「ステップ1: … ステップ2: … ステップ3: …」
ユーザー: 「ありがとうございます。最後に、そのアイデアのメリットとデメリットを箇条書きで教えてください。」
このように、対話を段階的に進めることで、より詳細で洗練された回答が得られるようになります。
ロールプレイや条件指定の活用法
プロンプト作成の上級テクニックとして、ロールプレイ（役割を与える）や条件指定を活用する方法があります。これにより、ChatGPTの回答スタイルや内容を狙い通りに調整することが可能です。
ロールプレイの活用: ChatGPTに特定の役割を演じてもらうよう指示することで、回答の口調や専門性をコントロールできます。
例: 「あなたは経験豊富な医者です。患者に説明するつもりで、病状について解説してください。」
例: 「あなたは歴史の教師です。中世ヨーロッパの文化について講義してください。」
条件指定の活用: 回答に守ってほしい条件やスタイルを細かく指定します。
例: 「回答は日本語でお願いします。」
例: 「回答を3つの箇条書きでまとめてください。」
例: 「敬語を使って説明してください。」
ロールプレイと条件指定を組み合わせることで、非常に細かい調整が可能になります。たとえば、「あなたは20年の経験を持つベテランシェフです。専門用語は使わず、小学生にもわかる優しい言葉で最新の料理トレンドを解説してください。」のように指示すれば、期待通りの回答が得られやすくなります。
よくある間違いとその改善例
初心者がプロンプト作成で陥りがちなよくある間違いと、それに対する改善例をいくつか紹介します。自分のプロンプトが以下のケースに当てはまっていないかチェックし、当てはまる場合は改善のヒントにしてください。
1. 質問が漠然としている
誤: 「経済について教えて。」
問題点: 範囲が広すぎるため、具体的な回答が得られません。
改善: 「日本の少子高齢化が経済に与える影響を、主要なポイントを3つ教えてください。」
2. 一度に多くを求めすぎている
誤: 「この小説のあらすじとテーマと感想をまとめて教えて。」
問題点: 複数の依頼が混在しており、回答が散漫になりがちです。
改善: 質問を分けるか、番号付きで整理して依頼します。例：「まずこの小説のあらすじを教えてください。その後、テーマについてお答えください。」
3. 文脈や前提を省いてしまう
誤: 「彼は今何をしている？」
問題点: 「彼」が誰なのか、どの状況にあるのかが不明瞭です。
改善: 「（前提）私の友人の太郎は医師です。昨夜から当直勤務をしています。（質問）彼は今何をしているでしょうか？」
4. 出力の形式を指定していない
誤: 「今年の売上データを分析して結果を教えて。」
問題点: 回答の形式や詳細が指定されていないため、期待とずれた回答になる可能性があります。
改善: 「今年の売上データを分析して、箇条書きで3つのポイントを教えてください。」
初心者がすぐに試せるサンプルプロンプト
最後に、今日から使えるサンプルプロンプトをいくつか紹介します。以下の例を実際にChatGPTに入力して、どのような回答が得られるか試してみてください。
- 例1: 文章の要約
「以下の文章を一文で要約してください: 『ChatGPTはOpenAIが開発したAIチャットボットで、入力されたテキストに対して自然な応答を生成します。』」 - 例2: 優しい説明
「『光合成』について、小学生にもわかるように優しく説明してください。」 - 例3: 文体の変換
「次の文章を敬語にしてください: 『すみません、ちょっと手伝ってくれない？』」 - 例4: アイデアの提案
「新しいスマホアプリのアイデアを3つ提案してください。」 - 例5: ロールプレイ
「あなたは英語の先生です。生徒に『their』と『there』の違いを簡潔に説明してください。」
これらのサンプルプロンプトを試すことで、プロンプトの工夫によってどのような違いが生じるかを体感してください。もし期待通りの回答が得られなければ、プロンプトの内容を調整して再度チャレンジすることをお勧めします。
おわりに
プロンプトの書き方は、慣れるほどに上達し、ChatGPTを最大限に活用できるようになります。最初は手探りでも、今回ご紹介したテクニックを意識して試行錯誤するうちに、確実に上達していくでしょう。明確で具体的なプロンプトを心がけ、ChatGPTとの対話を通してより良い結果を引き出してください。今後の創造的なアイデアの実現や学習のサポートに、ぜひ本講座の内容を活かしていただければ幸いです。
ChatGPTを賢く使いこなすことで、あなたの可能性は無限に広がります。ぜひ今日から、プロンプトの工夫を楽しみながら実践してみてください。
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